Skip to the content.

そのゲームは、誰が止まると止まるのか――PSN・AWS・物流委託の停止から、外部依存を棚卸しする

ゲームのサーバーは動いている。社内にも攻撃を受けた形跡はない。それでも、プレイヤーがログインできなくなったり、アイテムを買えなくなったり、購入特典が届かなくなったりすることがある。ゲームを支える社外のサービスや委託先が止まれば、その上に載る機能にも影響が届くからである。

平時に持っておきたい問いは、 「そのゲームは、誰が止まると止まるのか」 だ。プラットフォーム、サーバーの基盤、物流の委託先まで、ゲームを届けるためのつながりを書き出しておく。

IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編では、1位が「ランサム攻撃による被害」、2位が「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」である。サプライチェーンとは、製品やサービスを届けるまでの企業や業務のつながりを指す。自社の備えとともに、そのつながりにも目を向ける必要がある。[1]

本稿では、攻撃による停止と、攻撃ではない障害による停止を同じ表で扱う。内閣府の「事業継続ガイドライン」は、原因を問わず、事業が止まったときの影響を評価する考え方を示している。顧客や取引先の判断では、停止するかどうかが重要で、原因の違いが判断を大きく変えない場合が多いためである。[2]

PSN、AWS、無印良品ネットストアの三つの停止から、プランナーが外部依存を棚卸しする方法を考える。「情シスとプレイヤーのあいだを走る」第3回である。


三つの層で止まる

プラットフォームが止まる――PSN、2011年

2011年4月、ソニーは外部からの不正な侵入を受け、PlayStation Network(PSN)と、映像・音楽などを提供するQriocityのサービスを停止した。オンラインゲームも影響を受けた。[3] 日本では4月21日の昼ごろからネットワークが停止した。[4]

5月28日には、サインインとパスワード変更、PS3・PSPのオンライン対戦、フレンドリストやチャット、トロフィーなどが一部再開した。[5] PlayStation Storeのすべての機能や、ゲーム内アイテムなどの購入機能を含む日本での全面再開は7月6日だった。[6]

この経過から分かるのは、 「遊べる」と「買える」は、同じ日に戻るとは限らない ということだ。ゲームのプログラムや自社のサーバーが動いていても、プラットフォームに依存するオンライン機能や購入機能は、その停止の影響を受ける。棚卸しでも「PSNを使っている」の一行から、対戦、フレンド、購入という機能へ分けて考えたい。

基盤の、さらに下の基盤が止まる――AWS、2025年

クラウドとは、サーバーやデータベースなどの設備・機能を、ネットワーク経由で利用する仕組みである。Amazon Web Services(AWS)は、そのクラウドを提供する事業者の一つだ。

2025年10月19日23時48分から20日14時20分まで、米国太平洋夏時間で約14時間半、AWSの北バージニア地域(us-east-1)で障害が発生した。AWSの報告が挙げる引き金は、データベースサービスDynamoDBの、自動化されたDNS管理の仕組みに潜んでいた欠陥である。DNSは、サービスの名前から接続先を調べる仕組みだ。[7]

DynamoDBへの接続障害は、それに依存する別のサービスにも波及した。仮想サーバーを提供するEC2では新しいサーバーの起動などに、通信を複数の接続先へ振り分けるロードバランサーでは一部の接続に影響が生じた。処理を実行するLambdaや、認証・権限管理に関わるIAM・STSにも影響が及んだ。サービスごとに影響の時間や範囲は異なり、障害前から稼働していた既存のEC2仮想サーバーは正常に動いていたと報告されている。[7]

ゲームへの影響も報じられた。PocketGamer.bizは、Fortnite、Roblox、Pokémon GO、Clash Royaleなどで障害の報告があったと伝え、Fortniteの公式告知も、インターネット上の複数サービスの障害がログインに影響していると案内していたことを紹介している。[8]

依存先の名前を一つ書くだけでは、その先のつながりまで見えないことがある。ゲームが使う外部サービスのさらに下で、共通の基盤が動いているからだ。

物流の委託先が止まる――無印良品ネットストア、2025年

2025年10月19日21時、無印良品ネットストアは受注と出荷業務を停止した。良品計画の第一報によれば、配送を委託していたASKUL LOGISTに関係する、アスクルのランサムウェア感染によるシステム障害が理由である。良品計画自身のランサムウェア感染はなく、店舗の物流配送には影響がないとも説明した。[9] ランサムウェアとは、データを暗号化するなどして利用を妨げ、身代金を要求する不正なソフトウェアである。

ASKUL LOGISTはアスクルのグループ会社で、良品計画は同社の3PLを利用していた。3PL(サードパーティ・ロジスティクス)とは、物流業務を外部の企業へ一括して委託する仕組みだ。11月14日には、配送のために渡していた顧客情報の一部が外部に流出した可能性も発表された。対象として挙げられたのは、住所、氏名、電話番号、注文商品情報で、クレジット情報は含まれない。[10]

12月1日に一部商品の受注・出荷が再開され、全商品の受注・出荷業務の再開日は12月15日となった。[11]

ゲームに置き換えるなら、グッズ通販や購入特典の発送も、同じ問いで考えられる。ゲーム内で遊べても、物流を担う委託先が止まれば、約束した品物を届けられないことがある。また、棚卸しには、 止まる機能と、委託先へ預けたデータの両方 を載せる必要がある。

三つの停止を並べる

事例 停止のきっかけ 依存によって影響した範囲 棚卸しで持ちたい問い
PSN(2011年) 外部からの不正侵入 オンライン対戦やフレンド機能、ストア・ゲーム内購入など。日本では段階的に再開 認証、対戦、購入のどれをプラットフォームに頼っているか
AWS北バージニア(2025年) 自動化されたDNS管理の欠陥 データベースから、仮想サーバーの新規起動、一部の通信や認証などへ波及 直接使うサービスの下に、共通の基盤がないか
無印良品ネットストア(2025年) 物流委託先に関係するランサムウェア被害 ネットストアの受注・出荷。配送用顧客情報にも流出の可能性 届ける業務と、そのために渡すデータを把握しているか

停止の経過は各事例の資料に基づき、最後の列はゲームの棚卸しに向けた本稿の整理である。[3][5][6][7][9][10][11]

内閣府のガイドラインは、調達先を複数にしても、2段階以上先の調達先が同じで、そこが被災する場合に注意を促している。[2] この考え方をゲームの外部サービスに当てはめると、別々の取引先でも、その先が同じクラウドの同じ地域に依存していれば、一緒に止まる可能性がある。AWSの事例は、共通基盤の障害が複数のサービスへ広がる構造を示している。


ゲームの機能から、依存先を書き出す

棚卸しの入口は、プレイヤーや運営担当者が使う機能である。「ログインするには」「アイテムを買うには」「特典を届けるには」と順にたどると、社外に任せている部分を探しやすい。

次の表は、依存先を探すための観点である。実際に停止する範囲は、ゲームの構成や契約を担当者と確かめて記入する。

機能・業務 探す依存先の例
ログイン・フレンド連携 プラットフォーム、アカウント認証サービス
アイテム購入・課金 プラットフォームのストア、決済事業者
オンラインプレイ・データ保存 サーバーの基盤となるクラウド、データベース
ボイスチャット・分析・運営支援 外部のSDKやツール。SDKは、他社の機能をゲームへ組み込むための開発用部品一式
障害や更新の告知 公式サイトの運営基盤、公式SNS、Discordなど
問い合わせ・品質確認・翻訳 問い合わせ窓口、QA(品質確認)、ローカライズの委託先
グッズ販売・購入特典の発送 EC(ネット通販)の仕組み、倉庫、物流委託先
コラボ施策 コラボ先の承認窓口、素材提供、相手側の販売・告知経路

一覧にする際は、機能と依存先を一組にして、次の項目を持たせるとよい。

記入項目 書く内容
止まったときの影響 どの機能・業務が使えなくなるか。影響しない範囲も分かれば記す
社内の窓口 構成や契約を説明できる担当部署・担当者と、その代行者
契約上の連絡先 障害時の問い合わせ窓口、受付時間、連絡方法、契約情報の保管場所
渡しているデータ アカウントの識別情報、購入情報、問い合わせ履歴、配送先など
代わりの手段 代替先や別経路の有無、切り替えに必要な準備、担当者
その先の依存 分かる範囲で、利用するクラウド・地域や再委託先など

架空のゲームで埋めてみる

以下は、架空のオンライン協力ゲーム『星渡りの港』の記入例である。事業者、構成、担当の設定もすべて架空であり、実在サービスの仕様を示すものではない。横に長くなりすぎないよう、同じ番号で二つの表を対応させている。

番号・機能 依存先 止まったら何が止まるか 渡しているデータ
1 ログイン プラットフォーム認証 新規ログイン。ログイン済みの利用範囲はエンジニアが確認中 アカウント識別子、認証要求
2 協力プレイ 外部のマッチングサービス 新しい部屋への参加 ゲーム内識別子、部屋情報
3 告知 公式サイト運営サービス サイトの記事公開・閲覧 告知原稿、公開用画像
4 グッズ・特典配送 物流委託先 倉庫からの出荷 住所、氏名、電話番号、注文商品
番号 社内の窓口 契約上の連絡先 代わりの手段・準備 その先の依存
1 プラットフォーム担当、代行は開発責任者 法人向け窓口。連絡方法は契約台帳 即時の認証切り替えは未対応 非公開のため未把握
2 サーバー担当、代行は当番エンジニア 契約者向け障害窓口 代替サービスは未契約 クラウド甲の地域A
3 広報担当、代行は運営責任者 運営会社の緊急窓口 公式SNSへ掲載。投稿権限と承認者を確認済み クラウド甲の地域A
4 EC担当、代行は事業担当 委託先の業務窓口 別倉庫は未契約。切り替え条件を協議する 配送会社は把握済み。倉庫システムの基盤は照会中

2と3は別の会社のサービスだが、その下にある基盤が共通している。協力プレイと公式サイトが同時に使えなくなる可能性まで、この表から考えられる。

「未把握」「照会中」も、次に誰へ何を聞くかにつながる記入である。プランナーがゲームの機能を挙げ、エンジニアが構成を、契約担当が窓口や条件を補うと、一人では埋められない表を共同で育てられる。

自社のゲームを支える六つの依存先と、その先の共通基盤。直接の依存先が別でも、同じクラウドの同じ地域が止まると、サーバー基盤・告知の経路・委託先が一緒に影響を受け、自社のゲームへ波及する。灰色の実線は依存関係、赤い破線矢印は停止の波及方向を示す。


どれを、いつまでに戻したいかを決める

依存先が見えてきたら、停止の影響を時間の経過に沿って考える。内閣府のガイドラインは、優先して継続するか早く復旧する「重要業務」を選び、目標復旧時間、すなわち停止からいつまでに戻すことを目指すかを検討するよう示している。これはBCP(事業継続計画)、つまり危機に際して重要な業務を続け、復旧させるための計画につながる。[2]

ゲームの言葉なら、「遊べる」「買える」「知らせられる」「問い合わせに答えられる」「グッズや特典が届く」のどれを、どの程度の時間で戻したいか、という相談になる。

たとえば、課金が止まってもプレイを続けられることを優先するのか。プレイと購入の両方が止まる場合でも、告知の経路は確保しておくのか。問い合わせ窓口や出荷が止まった場合、時間がたつにつれて未対応の問い合わせや未発送の注文がどれだけ増えるのか。停止直後、数時間後、翌日と場面を進めると、優先順位を話しやすくなる。これらは、ガイドラインの考え方をゲーム運営へ当てはめた検討例である。

期間限定の販売を予定しているなら、販売期間とストア停止が重なったときの事業への影響も材料になる。依存先の復旧を待つしかない機能と、自社で別の経路を準備できる業務とでは、必要な備えが変わる。

復旧の優先順位や目標時間は、経営、開発、情シス、広報、契約・事業担当などと決める。プランナーは、 どの機能が、どの依存先に載っており、止まると誰が何に困るか を提示できることが大切である。目標を置いたあと、実現できる構成、契約、予算があるかも関係部署と検討する。


止まったと知る経路を、平時に控えておく

棚卸し表には、依存先の障害情報を掲載するステータスページと、契約上の連絡窓口を結び付けておきたい。公開ページのURL、通知を受ける方法、社内で最初に受け取る担当者、夜間・休日の連絡先まで一覧にする。公開情報だけで個別契約の影響が分からない場合に、誰が問い合わせるかも決めておく。

内閣府のガイドラインも、取引先や顧客などへ情報発信する体制、連絡先情報の保持、発信手段の確保を求めている。また、計画やマニュアルを最新の内容に維持することも重視している。[2] この考え方に沿って、連絡先一覧も担当者の交代や契約変更に合わせて更新するとよい。

告知先にも依存がある。公式サイトが使えないとき、公式SNSやDiscordから案内できるか。その投稿に必要なアカウント、権限、承認者へアクセスできるか。URLと担当者を書いたあと、実際に使えることまで平時に確かめておく。

障害を知ったあとは、情シスやエンジニアから説明を受け、自社の影響範囲を確かめてプレイヤーへ伝える。その流れは第1回「その『影響はありません』は、誰が、何を確かめて言えるのか」で扱った。今回の棚卸しは、その説明を受け取る前提を整える作業である。

外部ソフトウェアの脆弱性を受けて、自社がいつ停止するかを判断する場面は、PHP緊急メンテナンスの判断を扱う記事も参照してほしい。


「誰が止まると止まるか」が、守るものと伝えることを支える

PSNではプラットフォームが、AWSでは複数のサービスを支える基盤が、無印良品ネットストアでは物流の委託先が停止の連鎖を生んだ。ゲームを届ける仕事は、オンラインプレイから、購入、告知、問い合わせ、品物の発送まで外へ広がっている。

平時に「そのゲームは、誰が止まると止まるのか」を書き出しておけば、停止した依存先から自社の影響をたどり、何を優先して守り、何をプレイヤーへ伝えるかを相談できる。まずは、自分が担当する機能を一つ選び、その下にある依存先と、社内の窓口を書いてみるところから始められる。

次回、第4回は「止まっても壊れない運営――縮退運転」である。停止中も提供できる機能を絞って運営を続ける考え方と、ゲーム内の期限やイベントの扱いを取り上げる。補填の判断基準については、障害時の補填を整理した記事も参照してほしい。

References

1. IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」 — IPA、2026年1月29日公開。組織向け脅威の順位を参照。

2. 内閣府(防災担当)「事業継続ガイドライン ―あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応―」 — 内閣府、2023年3月。本文の印字頁11頁(事業中断の影響評価、重要業務・目標復旧時間)、17頁(調達先の複数化とその先の共通依存)、18頁(情報発信・連絡先情報の保持)、26頁(文書の維持・管理)を参照。

3. Patrick Seybold「Update on PlayStation Network and Qriocity」 — PlayStation.Blog、2011年4月26日。

4. Rio Tani「PlayStation Networkの障害は外部侵入が要因、復旧作業が続く」 — Game*Spark、2011年4月23日。日本での停止開始時刻とSCEJの告知を参照。

5. 船津稔「SCEJ、PlayStation NetworkとQriocityのサービスを5月28日から一部再開」 — GAME Watch、2011年5月27日。段階的な再開の対象機能を参照。

6. ソニー株式会社・ソニー・コンピュータエンタテインメント「日本におけるPlayStation®Network・Qriocity™(キュリオシティ)のサービス全面再開のお知らせ」 — 2011年7月4日。

7. AWS「Summary of the Amazon DynamoDB Service Disruption in the Northern Virginia (US-EAST-1) Region」 — AWS、2025年10月19〜20日の障害報告。本文の時刻は米国太平洋夏時間。DynamoDB、EC2、NLB、Other AWS Servicesの各節を参照。英文の要約は本稿による。

8. Isa Muhammad「Amazon Web Services outage impacts Clash Royale, Pokémon Go, Fortnite, Roblox and more」 — PocketGamer.biz、2025年10月20日。ゲーム側の障害報告とFortniteの公式告知を紹介した報道。英文の要約は本稿による。

9. 良品計画「無印良品 ネットストア受注停止に関するお知らせ(第一報)」 — 良品計画、2025年10月20日。

10. 良品計画「アスクル社のランサムウェア感染による当社顧客情報流出の可能性について」 — 良品計画、2025年11月14日。「無印良品 ネットストア受注停止に関するお知らせ(第二報)」。流出の可能性がある情報は同発表時点の説明。

11. 良品計画「無印良品ネットストア 全商品の受注、および出荷業務を再開」 — 良品計画、2025年12月12日。「ネットストア受注停止に関するお知らせ(第四報)」。12月15日の再開日と、それまでの経緯を参照。


この文書は、Perplexity、Claude、ChatGPT の3つのAIの支援を受けて著述されたものです。引用画像を除き、MIT License にて提供されています。