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ゲームにおけるUGC――Fortnite・Roblox・原神の設計と運営の比較

ユーザー体験・運営メリット・注意すべきリスクを読み解く


1. UGCとは何か:ゲームが「プラットフォーム」になる時代

UGC(ユーザー生成コンテンツ) とは、ゲームのプレイヤー自身がコンテンツを作成し、ほかのユーザーと共有・体験できる仕組みの総称である。[1

MODやファンアートのように非公式なものから、開発者が公式に提供するゲーム内エディターまで幅広く含まれるが、近年注目されているのは プラットフォーム型UGC、すなわちゲーム内に本格的な制作ツールと収益化・配信の仕組みが統合されたモデルだ。[2][1

その先駆者がRobloxとFortniteであり、2025年には原神も独自のUGCシステム「星々の幻境」を実装するなど、主要タイトルへの拡大が進んでいる。UGCはいまやゲーム業界の中枢的な成長エンジンとなっており、過去5年間で約90億ドル(約1.3兆円)もの投資を集めている。[3][4][5


2. 3タイトルの概要比較

項目 Fortnite (UEFN) Roblox 原神「星々の幻境」
UGC開始時期 2018年〜(UEFN:2023年〜) 2006年〜 2025年10月(Ver6.1)
主要ツール Fortnite クリエイティブ / Unreal Editor for Fortnite(UEFN) Roblox Studio 星々の箱庭エディター
プログラミング方式 Verse(スクリプト言語)/ ノードベース Luaスクリプト ノードベース(UEブループリント類似)
難易度 初心者〜プロ両対応 初心者向け入門ツール 初心者〜中級者向け
収益化 エンゲージメント報酬 + アイテム販売 開発者エクスチェンジ(DevEx) 専用イベント期間に実施
経済圏 V-Bucks(Fortnite本体と統合) Robux(独立仮想通貨) 専用通貨(原石とは別)
マルチプレイ
対象プレイヤー 幅広い年齢層 主に子ども・ティーン 既存の原神プレイヤー

3. Fortnite / UEFN

3-1. ユーザーが体験できること

Fortnite クリエイティブのコンテンツ選択画面 画像出典(引用): Epic Games Developer - User Interface Reference for Unreal Editor for Fortnite

Fortniteにおけるクリエイター向け環境は大きく2層に分かれる。

2023年のUEFN公開からわずか1年半でクリエイター数は24,000人から70,000人以上へ急増し、2024年には198,000以上のアイランドが存在した。プレイヤーの視点でも影響は顕著で、2024年のFortnite総プレイ時間のうち 36.5%(52.3億時間)がUGCアイランドへの滞在時間 を占め、70%以上のプレイヤーが公式・UGC両方のコンテンツをプレイしている。[8][9

3-2. 運営(Epic Games)にとってのメリット

3-3. 収益分配の仕組み

FortniteのUGC収益化は エンゲージメント報酬プログラム が中心だ。アイテムショップをはじめとする実課金の純収益の40%が「エンゲージメントプール」に積み立てられ、プレイヤーのアイランド滞在データ(新規・復帰ユーザーの引き込み、プレイ時間など)に応じてクリエイターへ分配される。2025年12月からは、自アイランド内でのアイテム直販も実装され、期間限定でV-Bucks収益の100%がクリエイターに還元される(通常は50%)。[13][14

2024年のクリエイター総支払額は 3億5,200万ドル(約530億円) で前年比11%増だ。7人が1,000万ドル超を稼いでいる一方、1万ドル以上稼いだクリエイターは全体の一部に留まる格差構造がある。[9][8

3-4. 運営が注意すべきリスク


4. Roblox

4-1. ユーザーが体験できること

Roblox Studioでオブジェクトを選択している編集画面 画像出典(引用): Roblox Creator Hub - Studio interface

Robloxは「ゲームプラットフォームのYouTube」とも例えられ、プレイヤーは Roblox Studio を使ってゲームを制作し、全世界のユーザーへ向けて公開できる。制作に必要なLuaスクリプトはビジュアルエディターと組み合わせられており、10代の初心者でも独学でゲームを完成させたケースが多数報告されている。[16][17

ユーザーはゲームを 作る だけでなく、着せ替えアイテムやUGCアバターパーツ(衣装・アクセサリー等)を 制作・販売 することもでき、消費者兼クリエイターという二面的な参加が可能だ。デイリーアクティブユーザーは2025年第4四半期時点で1億4,400万人(同年第3四半期には一時1億5,000万人超)に達し、未成年比率の高い若年層プラットフォームとして知られる(年齢確認済みユーザーでは13歳未満が約35%、13〜17歳が約38%)。近年は18歳以上の割合が拡大し、ユーザー層は徐々に高年齢化している。[18

4-2. 運営(Roblox社)にとってのメリット

4-3. 収益分配の仕組み

プレイヤーはRobux(仮想通貨)を使ってゲーム内アイテムや有料体験にアクセスし、クリエイターはそこから収益を得る。一定の閾値を超えたRobuxは DevEx(開発者エクスチェンジ)プログラム を通じて実際の法定通貨に換金できる。ただし換金レートはRobloxが設定するため、クリエイターが受け取れる実質額はRobux額面より大幅に少なくなる。[17

2025年第1四半期のDevEx処理額は1億2,200万ドルにのぼる一方、クリエイター1人あたりの平均収入はFortniteと比較して非常に低く(Roblox: 約143ドル/年 vs Fortnite: 約5,029ドル/年)、収益が少数のトップクリエイターに集中する傾向がある。[20][8

4-4. 運営が注意すべきリスク


5. 原神「星々の幻境」

5-1. ユーザーが体験できること

原神「星々の幻境」のエディター画面 画像出典(引用): ゲームエイト「星々の幻境(UGC)のゲーム制作(作り方)」

2025年10月のVer6.1(Luna Ⅱ)で実装された 星々の幻境 は、原神という一本のゲーム内に構築されたUGCプラットフォームだ。プレイヤーに提供される体験は主に4種類に分類される。[24][25

  1. ドール(アバター)のカスタマイズ:オリジナルのキャラクターを作り、テイワット世界を探索できる。髪型・顔・衣装を自由に設定でき、日本語CVも複数から選択可能[26
  2. 他プレイヤーとの交流:ゲーム内に設けられたロビーに集まり、世界中のプレイヤーとリアルタイムに交流できる[24
  3. オリジナルゲームの制作(「星々の箱庭」エディター使用):経営シミュレーション・サバイバル・パーティーゲーム・対戦など幅広いジャンルに対応。ノードベースのビジュアルプログラミングで、コーディング経験がなくてもゲームロジックを組める[4][24
  4. コミュニティ制作ゲームのプレイ:世界中のクリエイターが作成したステージを全デバイスで遊べる[24

注目すべきはそのスタート地点で、原神には既に数千万人の既存プレイヤーが存在する。「新しいプラットフォームに登録する」ではなく、「いつものゲームに新機能が追加された」という形での導入であり、UGCへのハードルが極めて低い点が他タイトルとの大きな違いだ。

5-2. 運営(miHoYo / HoYoverse)にとってのメリット

5-3. 収益化の仕組み

クリエイターはゲームを公開し、多くのユーザーにプレイ・評価してもらうことで収益を得られるが、収益化機能は実装当初(Luna II)には用意されておらず、 クリエイター収益システムはLuna IV(2026年1月)から導入された。収益は公開ステージのプレイ人数などのプレイデータに応じて分配される仕組みだが、具体的な分配の比率や条件は現時点で限定的にしか公開されていない。収益化を行うには、クリエイターセンターへの個人情報登録に加え、 クリエイターレベル2以上 への到達が必要だ。クリエイターレベルは審査制で段階的に機能が解放されていく仕組みである。Fortnite・Robloxと比べると収益化の歴史は浅く窓口も限定的だが、将来的な拡張が示唆されている。[28][29][30

5-4. 運営が注意すべきリスク


6. UGC運営の3つの共通課題

プラットフォームごとの差異はあれど、UGCを持つゲームが共通して直面する課題がある。

課題①:発見性の設計

制作されたコンテンツが増えるほど、良質なものが埋もれるリスクが高まる。Robloxはアルゴリズムによるおすすめとコンテンツ年齢ラベリングを、Fortniteはアイランドに対するエンゲージメント指標と「スポンサードロウ」をそれぞれ導入している。原神でも完了統計・コミュニティ評価・カテゴリフィルターによる発見システムが設けられている。発見性の設計はクリエイターの収益と直結するため、単なるUIの問題にとどまらず、エコシステム全体の健全性に影響する。[13][22][27

課題②:IPと著作権の管理

UGCは「ユーザーが作るもの」である以上、ゲームの資産を使って無断に他社IPや類似コンテンツが制作されるリスクを避けられない。FortniteはDMCA申請による削除対応を行っており、プラットフォームごとに公式IPライセンス制度を整備することでリスクを構造的に低減しようとしている。[23][11

課題③:クリエイター収益の公平性

プラットフォームが成長しても、収益の大半はごく少数のトップクリエイターに集中する。Robloxでは上位10クリエイターの年間平均報酬が約3,390万ドルに達する一方、開発者全体の報酬中央値は年間約1,400ドルにすぎず、Fortniteでも1,000万ドル超えは7人のみだ。プランナーとして設計する際は、「多くのクリエイターがまず最初の収益を得られる」ためのオンボーディングと、「継続的な成長を促すためのスケーリング報酬」の両方を設計に含める必要がある。[5][9


7. ゲームプランナーへの示唆:UGC設計の4つの原則

  1. 経済圏の設計を最初に決める:本体通貨との統合か分離かは、課金ユーザーの不満と新規ユーザーの参入容易性に直結する。原神型の「分離」はリスクを最小化するが、経済圏が複雑化する。

  2. ツールの難易度を段階化する:Roblox Studioのような「誰でも始められる入口」と、UEFNのような「プロが本気で使える奥行き」の両方を設計することで、クリエイター層の厚みが増す。

  3. コンテンツのモデレーションを先行投資と見なす:UGCが成長するほどモデレーションコストは指数的に増加する。年齢ラベリング・AIによる自動検出・コミュニティレポートの仕組みを最初期から組み込んでおくことが不可欠だ。[21][18

  4. コンテンツが生まれるまでの「0→1」を支援する:多くのUGCプラットフォームで失敗するのは、ツールを提供した後の「誰も作らない状態」への対処である。公式チュートリアル・テンプレート・コミュニティフォーラム・創作応援プログラムなど、最初の体験を設計する伴走支援が長期的なエコシステムの礎となる。[32][26


まとめ:3タイトルのポジションを俯瞰する

観点 Fortnite (UEFN) Roblox 原神「星々の幻境」
プレイヤーにとっての自由度 高い(本格ゲーム制作可) 中〜高(初心者向き) 中(原神内に特化)
収益化の実績 高い(1人あたり報酬が最大) 高い(総額は最大) 発展途上
クリエイター参入障壁 中〜高(UEFN習得が必要) 低(Luaとビジュアルエディター) 低〜中(ノードベース)
安全・モデレーション課題 中(IP問題が主) 高(未成年保護が最重要) 未知数(規模拡大後に顕在化)
プラットフォーム成熟度 中(急成長中) 高(20年近い歴史) 低(実装後1年未満)

UGCは「コンテンツを消費するゲーム」から「コミュニティが体験を作るプラットフォーム」へという、ゲームの本質的な転換点を示している。どのタイトルにも共通するのは、「ユーザーに創る楽しさを渡すことが、最終的には運営にも大きな価値をもたらす」という逆説的な関係性だ。[1


References

1. Games industry in 2026 and beyond: is user-generated content the … - … platform fees. Roblox D2C revenues in Q4 2025 were 30% of total revenues while aggregate platfor…

2. Exploring UGC in the Gaming Industry: How Community Content … - Newzoo reports indicate that games with robust UGC systems have been seen to experience a 15-20% inc…

3. 「原神」に実装されたユーザー生成コンテンツ「星々の幻境」とは … - オープンワールドゲーム「原神」にUGC(ユーザー生成コンテンツ)「星々の幻境」が実装されました。これまでの原神はmiHoYoが提供してきたコンテンツを …

4. 『原神』の大型新機能「ユーザー生成コンテンツ(UGC)」発表 - 本作におけるUGCとは、プレイヤー主導で作り上げるコンテンツとされている。 … そうした思いから、今回の大型コンテンツ「UGC」が誕生したそうだ。 具体 …

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