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そのムービー、動画で流すか、ゲームの中で動かすか――プリレンダーとリアルタイムの判断をプランナーが支える

1. 『ACE COMBAT 8』のセッションから考える

2026年11月4日12時、CGWORLD Game Week 2026で、『ACE COMBAT 8: WINGS OF THEVE』の映像・UIデザインを扱うセッションが配信された。公式イベントページでの題名は「『ACE COMBAT 8』の世界観を彩る映像・UIデザイン ─ flapper3が語る表現の追求と制作の工夫」。登壇したflapper3のディレクター、山本太陽氏は、同作のモーショングラフィックス、UIコンセプト、フォント制作を担当している。ゲームエンジンによるゲームとの連携、処理を図式的に組み立てるUnreal Engineの機能であるBlueprintの活用、情報の密度感を保つ調整が紹介された。[1]

編者の視聴による要点は、従来のプリレンダームービー制作では使っていなかったUnreal Engineを用い、ムービーとゲーム内のデザインを合わせる取り組みだった。制作の詳しい内容は、CGWORLD公式チャンネルの配信アーカイブを見てほしい。[2]

本稿ではそこから、ムービーを事前に動画にするか、ゲームの中でその場で描くかという判断を考える。方式を選ぶディレクターやデザイナーに対して、プランナーは何を用意し、決定後に何を仕様にするのか。

軸になるのは、 プレイヤーの状態をどこまで映すか、いつ映像を確定させるか、どこまで作り直せるか である。作品が優先する体験によって、選ぶ方式と必要な段取りが変わる。


2. 「何で作るか」と「どう再生するか」を分ける

プリレンダー:完成した映像を動画として再生する

プリレンダーは、事前に映像を描き出しておき、ゲーム中では動画として再生する方式である。プレイヤーの機械は、その場で登場人物や背景を描く代わりに、用意された映像を再生する。

CEDEC 2013のIGC(In-Game Cinematics、ゲーム内の演出映像)パネルでは、事前に描いた動画を再生するFMVと、その場で描くCutscenesを区別していた。FMVはリアルタイムより高品質な映像にできる一方、装備変更をそのまま反映できないと整理された。この比較は、再生時の描画性能に縛られず映像を用意できることと、完成映像に状態が固定されることを示している。[3]

リアルタイム:再生するその場でゲームが描く

リアルタイムでは、ゲームエンジンがキャラクターや背景をその場で描く。ゲームの状態を演出へ渡せるため、装備などを映像に反映する設計が可能になる。

同パネルの分類では、基本的に操作を止めて見るCutscenesに対し、Scripted Eventsは操作を続けるゲームプレイと演出が連続する仕組みである。 描く方式と、プレイヤーに操作を許す範囲は別の仕様 だ。「リアルタイムにする」と決めた後にも、移動、カメラ操作、戦闘をどこまで続けられるかを決める必要がある。[3]

中間:ゲームエンジンで作り、動画にして再生する

ゲームエンジンで映像を制作し、動画として書き出す方法もある。本稿では比較のために「中間」と呼ぶが、再生方式としてはプリレンダーに含まれる。

Unreal Engineにも、映像を書き出すMovie Render Queueがあり、出力解像度やフレームレートを指定できる。制作にゲームエンジンを使うことと、製品上でリアルタイムに再生することは分けて考えられる。[4]

この方式では、ゲームと同じ素材や描画の仕組みを使って見た目を揃えつつ、再生時には動画として扱える。『Condemned 2: Bloodshot』の開発日記では、実際にゲームエンジンでオフライン描画する方法が採られた。ゲーム用素材を使え、別の描画環境へ素材を移す負担も減ったという。[5]

以降の「動画として再生する場合」の説明は、この中間方式にも当てはまる。


3. 方式が変わると、プランナーの仕様はどう変わるか

プレイヤーの状態:何を映し、何を固定するか

プリレンダーなら、装備、選択キャラクター、仲間の編成、時間帯、天候の違いは、完成した一本の動画には自動で反映されない。違いを見せるなら、別映像や切り替えの仕組みを用意することになる。組み合わせごとに動画を用意する設計では、本数と容量の見積もりが必要だ。

『バランワンダーワールド』では、選んだキャラクターをプリレンダームービーに登場させるため、動画内のキャラクターを切り替える仕組みを開発した。CRI・ミドルウェアの櫻井敦史氏によるCEDEC 2021の公式セッション概要は、キャラクター別に動画を用意すると容量が膨大になる課題に対し、4種類のキャラクター違い動画を1.5倍のデータサイズで実現したと説明している。これは専用の仕組みによる成果であり、動画を選べば同じ圧縮効果が得られるという意味ではない。[6]

リアルタイムなら、現在の状態を渡して描ける。ただし、何を引き継ぐかの指定は要る。プランナーは「装備武器は反映する」「仲間の位置は演出用に揃える」「物語上必要な時間帯へ切り替える」といった項目を分け、プレイヤーに見える変更を演出担当と合意しておく。

ゲーム画面とのつながり:最後の一枚から、操作再開まで

プリレンダーなら、動画の最後と操作再開直後の画面を合わせる作業が生じる。IGCパネルでは、『アンチャーテッド3』を例に、FMV終了後とゲーム側のキャラクターの立ち位置をエディターで手動調整する必要があると紹介された。[3]

リアルタイムなら、ゲームの素材や状態を共有してつながりを作れる。それでも、カメラ、照明、立ち位置まで自動的に一致するとは限らない。『GRANBLUE FANTASY: Relink』では、カットシーンとプレイ部分をフェードアウトなしでつなぐため、専用の遷移を用意した。[7]

プランナーが仕様にするのは、開始条件と終了条件である。どの位置から始め、誰を登場させ、どの装備を保持し、どの状態で操作を返すか。スキップした場合にも同じ終了条件へ到達するようにしておく。

修正とローカライズ:変わった情報が、どこに入っているか

プリレンダーなら、モデル、口の動き、背景の文字など、映像そのものに入った情報の変更は該当部分の描き出し直しにつながる。一方、ゲーム側で重ねる字幕や別管理の音声なら、それらの差し替えで済む設計も考えられる。修正範囲は、映像へ焼き込む情報と外に分ける情報によって変わる。

Microsoftのローカライズ解説は、音声の適応に翻訳、配役、演出、顔のアニメーションへ合わせる口の動きの同期が関わり、カットシーンの収録には映像を使う必要があると説明している。台詞と映像の尺を別々に確定させると、収録側の条件にも影響する。[8]

リアルタイムなら、データを直して実機上で確認する流れを作れる。『Relink』は、制作ツールと実機をつなぎ、編集結果を直接確認する「ライブリンク」を活用した。書き出しと変換をやり直す待ち時間を減らす取り組みである。[9]

その反面、リアルタイムの演出はゲーム本体の変更も受ける。『Relink』の公開講演資料では、背景などの変更の影響を検知するため、全シーンを毎日自動再生する確認体制も示されている。[7]

したがって、費用と段取りを考えるときは、動画の再出力や再納品だけでなく、実機での再確認、音声収録、言語別の確認も対象にする。ローカライズ全体の工程と音声収録の段取りを、ムービーの確定日へ結び付けたい。

容量とアップデート:差し替える単位を決める

プリレンダーなら、まず動画の本数と容量を積み上げる。『バランワンダーワールド』の例が示すように、状態違いをどう収めるかは専用の設計課題になる。[6]

リアルタイムなら、動画の代わりにモデル、アニメーション、背景などの演出用データを使う。『Relink』でも、長い演出のデータを一度に読み込む負担を避け、ショット単位で読み込めるようにしている。[7]

プランナーは、方式にかかわらず、動画または演出用データ、言語別音声、字幕を分けて見積もるよう担当者へ条件を渡す。アップデートについても、「台詞一行の変更で動画まで差し替えるか」「音声言語を分けて配信するか」「共通モデルの更新が既存の演出へ及ぶか」を確認項目にする。実際のダウンロード量はデータのまとめ方にも依存するため、完成ファイルの大きさと配信時の差分容量を分けて確認する。

画面の仕様と移植:固定する品質、実機で守る品質

プリレンダーなら、映像の元になる解像度とフレームレートは書き出し時に決まる。画面を拡大表示しても、元の映像にある細部や時間方向の情報はそのままである。中間方式でも同じで、出力条件の決定が必要になる。[4]

リアルタイムなら、プレイヤーの画面設定を演出へ反映する設計ができる。『Relink』では解像度・フレームレートの設定と装備中の武器をカットシーンでも反映している。一方で、実機の処理負荷に対して品質を守る作業が必要になる。[7]

移植や将来の高解像度対応を予定しているなら、動画の再出力用素材を残すか、リアルタイム演出を新しい環境でも確認するかを段取りに入れる。ハードを渡るゲームの設計と同様、発売時の一機種だけを前提にしない計画が役立つ。

スキップ・一時停止・再視聴:見る側の都合も仕様にする

Xbox Accessibility GuidelinesのXAG 108は、セーブ・ロード画面を除くシングルプレイなどで、プレイ中に加え動画やスクリプトによる演出も随時一時停止できることを推奨している。Game Accessibility Guidelinesも、物語や指示を再確認できるようにすることを勧めている。[10][11]

プリレンダーなら、動画の停止・再開と、別管理した音声や字幕の同期を確認する。リアルタイムなら、演出に関わる動き、音声、ゲーム側の進行のどこまで止めるかを実装担当と確認する。方式だけから一時停止の実装難度を決め付けず、使う再生基盤が何を止められるかを確かめたい。

その上で、スキップの操作、誤操作を防ぐ確認、再開位置、再視聴時の状態を定める。途中再開は「その場で一時停止を解除する」のか、「ゲームを終了した後に途中から戻る」のかも分ける。飛ばした後に必要な目的はクエスト表示などで補う、といった情報の受け渡しもプランナーの仕様になる。長いカットシーンとプレイヤーの裁量を考える際にも、この操作仕様は欠かせない。

3つのムービー方式について、状態の反映、ゲームとの接続、修正、容量、再生時の負荷を比べた表


4. 作品の優先事項を、制作の仕組みに変えた事例

『Relink』:プレイ部分との連続性を支える

『GRANBLUE FANTASY: Relink』でシネマティクス全体を統括したCygamesの中村大吾氏は、プレイ部分との印象の差を減らし、動画へ切り替わったと感じさせないことを重視したと講演で説明している。すべてのシネマティクスをリアルタイムにし、前節の画面設定や武器の反映へつなげた。[9]

この選択には、演出中の品質を守る条件も伴った。負荷に応じて解像度を下げるDynamic Resolutionや、モデル・テクスチャの読み込みに伴うポッピングを目立たせない方針である。LODは、距離などに応じてモデルの細かさを切り替える仕組み、ストリーミングは必要なデータを順次読み込む仕組みであり、その切り替わりが見えてしまう現象をポッピングという。[7]

対策には、遮られて見えないものを描かないオクルージョンカリング、登場の約2秒前からのLOD・テクスチャの読み込み要求、機種ごとに異なるフレームレートでも音と演出を同期させる対応、毎日の自動計測が含まれる。ライブリンクによる直接調整と併せ、連続性を制作・確認の両面で支えた。[7][9]

プランナーへの示唆は、リアルタイムを採るなら、演出中に許す品質変化、読み込みを始める条件、確認に使う機種・設定まで決めることである。

『武器よさらば』:変わる条件をテンプレートへまとめる

『武器よさらば』のカットシーン制作を担当したグリーの萬両史浦氏は、グラフィックエンジニアとの2人体制でUnityを使った制作を行った。地形の形、時間帯、天候、キャラクター、武器の違いを共通のテンプレートで扱い、本番素材の制作前にはUnityで仮の映像を作って配置とカメラワークを確かめている。[12]

プランナーは、こうした再利用を支える変数を早期に洗い出せる。武器が変わっても同じ登場演出を使うなら、共通で成立させる範囲と個別対応が必要な範囲を分ける。仮素材の段階で確かめる条件が明確なら、本番素材が揃う前にも仕様の検討を進められる。

『Condemned 2』:実機の制約を離れ、動画として届ける

『Condemned 2: Bloodshot』のPrimary Lead ArtistであるMatthew Allen氏は、前作のリアルタイム演出でメモリとフレームレートが制約になったと開発日記で説明している。続編ではまずMayaとMental Rayによるプリレンダーを選んだが、素材の往復や描画時間が課題になり、最終的にゲームエンジンでオフライン描画する方式へ移った。[5]

高性能な制作用PCで事前に描くことで、製品を動かすゲーム機の描画負荷に合わせる制限を外し、ゲーム用の最新素材も使えた。これは第2節の「中間」に当たる。 プレイ時の状態反映よりも、事前に作り込んだ映像を届けることを優先する判断 の具体例である。[5]

『Relink』が実機上の連続性を支える仕組みを整えたのに対し、こちらは制作と再生の役割を分けた。プランナーが揃えるべき条件も、実機上の負荷と状態の確認から、映像の出力・受け渡し・接続条件へと変わる。


5. プランナーが早めに決めておくこと

方式を検討する打ち合わせには、「きれいに見せたい」から一段具体化した条件を持ち込む。

たとえば、武器の見た目が物語の意味に関わるなら、その反映を必須条件として提示できる。画面内の文字が発売直前まで変わるなら、その部分を映像に固定する段取りでよいかを相談できる。プランナーが条件を揃えることで、方式の判断と、その後の変更判断に共通の基準ができる。

方式はデザイナーやディレクターが選ぶ。その判断を、条件と段取りで支え、実装・制作・確認へ渡せる仕様にするのがプランナーの役割である。

References

1. CGWORLD「CGWORLD Game Week」 — 公式イベントサイト、2026年11月2〜7日。11月4日12時のセッション名・担当範囲・紹介内容を参照。本文の視聴要点は編者による。

2. CGWORLD「『ACE COMBAT 8』の世界観を彩る映像・UIデザイン ─ flapper3が語る表現の追求と制作の工夫|CGWORLD Game Week」 — CGWORLD公式YouTubeチャンネル、2026年11月4日12時配信。配信アーカイブ。

3. 川村和弘「ゲーム内でのリアルタイムな演出映像“In-Game Cinematics(IGC)”の現状をゲーム開発者が語り合うパネルディスカッション【CEDEC2013】」 — ファミ通、2013年8月30日。方式の分類と『アンチャーテッド3』の接続調整を参照。

4. Epic Games「Cinematic Rendering Image Quality Settings in Unreal Engine」 — Unreal Engine公式ドキュメント、2026年11月5日参照。Movie Render Queueの出力解像度・フレームレート設定。動画出力形式は同ドキュメントのExport Formatsも参照。

5. Dave Hasle・Matthew Allen「Condemned 2: Bloodshot Development Diary」 — VideoGamer、2007年12月21日。Monolith Productions開発者による制作記。Mental Rayからゲームエンジンによるオフライン描画へ移った経緯を参照。英語資料の内容は本稿で要約した。

6. 櫻井敦史「プリレンダームービーでのキャラクター切替への挑戦」 — CEDEC 2021公式セッションページ、2021年8月25日。公開概要に記載された『バランワンダーワールド』の仕組みとデータサイズを参照。

7. 中村大吾「『GRANBLUE FANTASY: Relink』続・最高の『没入感』を実現するカットシーン制作手法とそれを支える技術」 — Cygames公開講演資料、2024年12月10日公開。CEDEC+KYUSHU 2024講演。スライド16〜34、47〜68を参照。

8. Microsoft「Localize games」 — Microsoft Learn、2026年11月5日参照。音声とカットシーンのローカライズ工程。英語資料の内容は本稿で要約した。

9. 白熊のヨゥ「『GRANBLUE FANTASY: Relink』ユーザーがスキップせず見たくなるカットシーンの秘訣は『没入感』と『映像美』。“最高のシネマティクス”を作るために行われた独自の取り組みを紹介」 — 電ファミニコゲーマー、2025年1月14日。編集:anymo。中村大吾氏のCEDEC+KYUSHU 2024講演レポート。

10. Microsoft「Xbox Accessibility Guideline 108: Game difficulty options」 — Microsoft Learn、2026年3月4日更新。Implementation guidelinesの一時停止に関する項目。英語資料の内容は本稿で要約した。

11. Game Accessibility Guidelines「Allow all narrative and instructions to be replayed」 — Game Accessibility Guidelines、2026年11月5日参照。物語・指示の再確認に関する項目。英語資料の内容は本稿で要約した。

12. gamebiz「【CEDEC 2017】少人数での効率的な仕事方法…『武器よさらば』におけるカットシーン制作事例」 — gamebiz、2017年9月12日。萬両史浦氏による講演のレポート。


この文書は、Perplexity、Claude、ChatGPT の3つのAIの支援を受けて著述されたものです。引用画像を除き、MIT License にて提供されています。