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城の入口は、なぜ曲がっているのか――虎口と枡形から、足を止める入口を設計する

城下町の中央広場から、北へ続く坂を上る。目の前には城の門がある。門をくぐれば、そのまま城の中心へ進めると思っていた。ところが、正面を塞いでいるのは壁だ。四角く囲まれた空間で横を向くと、ようやく次の門が見える。

第1回で歩いた架空の城下町から、今回は城の入口へ進もう。前回の5要素でいえば、ここは街と城を隔てる「縁」を、「道」が通り抜ける場所である。

全7回のシリーズ「城と街から拠点をつくる」第2回の問いは、 「入口をいくつにし、どこで足を止めさせるか」 だ。日本の城では、守る側が攻め手の進む向きや速さを制限するために、入口の形を工夫した。ゲームでその形を使うときは、プレイヤーが守る側なのか、攻める側なのかによって、残したい働きが変わってくる。


虎口――壁の切れ目を、守る場所にする

虎口(こぐち)とは、城壁に設けた出入口のことで、「小口」とも書く。山梨県埋蔵文化財センターの用語集は、城へ攻め込まれたときの初期の防衛線として、さまざまな形が作られたと説明している。[1]

壁で囲った場所にも、人や物が出入りする切れ目は必要だ。その切れ目は、敵にも通り道を与えてしまう。守る側の立場で考えれば、入口の数を絞って守備を集中させ、通れる場所では相手の勢いを削ぎたい。

そのための工夫が、入口の先でまっすぐ進めなくすることだ。壁に沿って向きを変えさせ、進む速度を落とさせる。用語集が挙げる入口の形には、そうして敵を迎え撃ちやすくする働きがある。[1]

ここでは、門扉だけでなく、その前後の壁や空間も含めて「入口」と捉えたい。どこを通し、その先でどちらへ向かわせるかまでが、一続きの仕掛けになっている。


枡形虎口――門の先に、もう一つの門を置く

枡形虎口(ますがたこぐち)は、入口を抜けると四角く囲まれた狭い空間に入り、さらにもう一つの入口を通る形である。[1] 最初の門を突破しても、そこからすぐに奥へ駆け込めるわけではない。

具体例が、江戸城の桜田門だ。小さな門と大きな門が直角に配置され、その間に囲まれた空間を作っている。[2]

小さなほうは高麗門(こうらいもん)という。正面の柱を後ろの柱で支え、開いた扉を覆う小さな屋根を備えた形式の門だ。[3] 大きなほうは櫓門(やぐらもん)で、門の上に兵が構えられる建物を載せている。桜田門では、最初の門をくぐった者が直角に曲がる間に、上から矢を射かけたり、石を落としたりできる仕組みだった。[2]

この配置では、攻め手は次の門へ向き直る必要があり、守る側はその間も上から攻撃できる。 門を二つにすることと、その間で進む向きを変えさせること が組み合わさっている。

枡形虎口の平面模式図。攻め手は下の高麗門から入り、壁に囲まれた空間で右へ直角に曲がって櫓門を通る。青い「守」は地上ではなく櫓門の上の守備位置を示す。

桜田門の二つの門と直角に曲がる進路を示した模式図。実測図ではなく、寸法や正確な方位は示していない。山梨県と観光庁の解説をもとに作成。[1][2]


食違虎口と馬出――曲げる場所、受け止める場所を変える

入口の形には、ほかにも工夫がある。食違虎口(くいちがいこぐち)は、ジグザグにずれた城壁の間を通す入口だ。壁の配置によって、入る者の進行方向が決まる。[1] 四角い空間を二つの門で挟む形とは違っても、まっすぐ進ませない働きがある。

馬出(うまだし)は、城門の外側に設ける防御のための区画である。山梨県の用語集では、枡形を本来の門から離して置き、壁に守られた一本道でつないだような形として説明されている。[1] この形なら、攻め手は本来の門へ届く前に、外側の区画と限られた道を通ることになる。

三つの形を設計の手がかりとして読むなら、枡形は「門と門の間」、食違は「壁のずれ」、馬出は「門より手前の区画」に注目できる。入口を工夫する場所は、門扉のすぐ脇にも、そこへ至る手前にもある。


姫路城の門――通れる人数を絞り、奥の暮らしを守る

姫路城では、複数の門と、上に建物を載せた門が入口を守っている。観光庁の解説によると、狭くなった入口の一部は、2人がやっと収まるほどの幅だった。攻め手を狭い場所へ集め、守る側に有利な状態にする仕組みである。[4]

こうした、人の流れが狭い場所で詰まる箇所をボトルネックという。幅が限られれば、大勢で押し寄せても、同時に通れる人数は限られる。

同じ解説は、門が城の中心部にある生活空間への直接の侵入を防ぐ役割も担ったと述べている。[4] 入口を守る意味は、その先に暮らす人や場所まで敵を通さないことにある。

ゲームの拠点でも、この「奥に何があるか」は入口を考える出発点になる。門の先が住民のいる安全な広場なのか、敵の待つ戦闘空間なのかで、そこで作りたい緊張や安心は違ってくる。


ゲームでは、入口の働きを三つに分けて考える

ここからは 本稿の考察として、城の入口をゲームの拠点やダンジョンへ置き換える。城の守備をそのまま再現することと、プレイヤーに心地よい緊張や判断の間を作ることは、目的が異なる。形から持ち帰る働きを、三つに分けてみよう。

向きを変えさせる

最初の門と次の入口をずらせば、プレイヤーは進む方向を変える。その曲がり角で、次に見るものを切り替えられる。

たとえば、敵の拠点へ入る通路を一度曲げ、その先で中庭と見張りが見えるようにする。プレイヤーが中庭へ踏み込む前に、様子を確かめるきっかけを作れる。実際に何が見えるかはカメラの高さや動かし方で変わるので、操作中の画面で確かめたい。

立ち止まる場所を作る

ボス戦の手前に小さな囲われた空間を置けば、装備や回復手段を確認する場所にできる。拠点の入口なら、門番との会話や行き先の確認を挟める。

城の枡形は攻め手を攻撃できる場所だが、ゲームでは同じような囲いを、安全に準備する場所へ読み替えられる。ここで決めたいのは、 立ち止まったプレイヤーを守るのか、危険にさらすのか である。

囲いがあるだけでは、プレイヤーはそのまま走り抜けるかもしれない。準備を促したいなら、次の扉や会話相手など、そこで行うことも一緒に置く。

先を見せない

入口の正面に壁があれば、奥の部屋は直接見えにくくなる。曲がり角を越えたところで初めて、広い空間や大きな敵を見せる、といった使い方ができる。

一方で、危険を判断させたい場面なら、隠し方にも加減が必要だ。姿をすべて見せなくても、足音や光、壁に映る影で気配を伝えられる。プレイヤーにどこまで予想してほしいかを決めてから、遮る範囲を調整したい。

三つの働きは、別々に点検できる。道を曲げても、カメラ越しに奥が見えることはある。狭い囲いを作っても、安全に止まれるとは限らない。移動・停止・見通しを一つずつ確かめると、形と狙いの食い違いを見つけやすい。


潜入するゲームでは、入口を選ばせる

守る側には、相手が来る場所を絞りたい理由がある。一方、潜入する側を遊ばせるゲームには、どこから入るかを選んでもらう設計がある。

『アサシン クリード シャドウズ』でレベルデザインディレクターを務めるUbisoft QuebecのLuc Plante氏は、Press Startのインタビューで、各拠点を全方向から検討し、複数の侵入口を用意する方針を説明している。戦闘を中心とする侍と、忍としての接近の両方を支え、周囲の状況を見たプレイヤーが自分で作戦を立てられるようにするためだ。[5]

同作のクリエイティブディレクターであるJonathan Dumont氏も、ファミ通.comのインタビューで、遠くから見える城を攻略対象として際立たせ、そこへ潜入する体験に大きなスリルを感じてほしかったと語っている。[6]

この二つの発言からは、城の守りが生む緊張と、潜入経路を選ぶ自由を、一緒に成立させようとする考え方が読み取れる。入口を増やしても、そこをどう通るかという課題は残せる。

本稿の考察として整理すれば、両極にあるのは、 守る側が通り道を絞る設計 と、 攻める側が通り道を選ぶ設計 だ。たとえば、城の外周では複数の入り方を選ばせ、目的の部屋の手前では小さな前室に集める、といった組み合わせも考えられる。場所ごとに、どちらの働きを強くしたいかを選べばよい。


「入口をいくつにし、どこで足を止めさせるか」を点検する

まず、入口の外と内に何があるかを書き、その場でプレイヤーにしてほしいことを一文にする。「城へ潜り込む方法を選ぶ」「次の戦闘に備える」「住民のいる拠点へ安心して戻る」では、必要な入口が変わる。

次の表は、本稿の考察を設計時の点検にまとめたものだ。

観点 確かめること 調整の例
プレイヤーの立場 攻める側、潜り込む側、守る側のどれか 潜入なら経路を選ぶ余地、守備なら迎え撃つ位置を用意する
入口の数 入り方を選ばせたいか、一か所へ集めたいか 外周の入口を増やす、重要な部屋の入口を絞る
曲がり角 向きを変えることで、何を見せたいか 次の部屋の入口をずらし、曲がった先の見せ場を決める
立ち止まる空間 どこで何を判断し、そこは安全か 見張りを観察する場所や、装備を整える前室を置く
見通し 入口から何が見え、何を予想できるか 壁で姿を隠しつつ、音や光で奥の気配を伝える
通路の幅 同時に何人を通し、誰の動きを制限したいか 主人公・仲間・敵が通る様子を、それぞれ実際に試す

最後は、プレイヤーの視点で入口を通ってみる。複数の入口を置いたなら、入る前にそれらを見つけ、違いを判断できるだろうか。準備の場所を置いたなら、安心して止まれるだろうか。毎回通る拠点なら、二度目以降にも同じ足止めが必要だろうか。

城下町から北の城へ向かう場面に戻ろう。最初の門をくぐり、壁に沿って向きを変え、次の門の前に立つ。この短い移動にも、通る場所を絞り、勢いを落とし、奥へ進む順序を決める働きがある。

自分のゲームでは、その働きを誰のために使うのか。 入口の数と、足を止める位置を、そこで生みたい体験から決める。 城の入口は、その判断を形にする手がかりになる。

References

1. 山梨県埋蔵文化財センター「まいぶん用語集 枡形虎口」 — 山梨県、2026年4月14日更新。虎口・枡形虎口・食違虎口・馬出の説明。

2. 観光庁「桜田門/Sakuradamon Gate」 — 多言語解説文データベース、2019年度作成。関係地域:皇居外苑。ページ内の日本語解説・英語解説を参照。

3. 高崎市教育委員会「箕輪城本丸西虎口門」 — 高崎市、2026年3月。「高麗門の構造」を参照。2026年10月9日閲覧。

4. 観光庁「戦いへの知恵を秘めた美しい仕掛け 門」 — 多言語解説文データベース、作成年度記載なし。関係地域:姫路市。日本語解説PDF、1ページ。2026年10月9日閲覧。

5. James Wood「We Chatted To The Assassin’s Creed Shadows Level Design Director About Creating The Most Requested Setting Yet」 — Press Start、2025年1月。Luc Plante氏へのインタビュー。本文では英語の回答を日本語で要約。

6. ファミ通.com「『アサシン クリード シャドウズ』インタビュー。ここがシリーズの新たな出発点。『最新世代機で実現した表現のダイナミズムと、美しい世界で語られる継承と変革の物語を体験してほしい』」 — ファミ通.com、2025年2月20日。Jonathan Dumont氏による城の規模・潜入体験についての回答を参照。


この文書は、Perplexity、Claude、ChatGPT の3つのAIの支援を受けて著述されたものです。引用画像を除き、MIT License にて提供されています。